2009年09月06日

音律

音律今日はちょっと専門的なお話です。

1722年にバッハが採用した平均率。普段当たり前のように私たちピアノ調律師が調律している音律です。

以前弦楽器の演奏家の方とお話しする機会があったのですが、弦楽四重奏や管弦楽では、演奏家や楽曲など様々な条件でピッチが変わるそうです。私にとっては全く考えもしなかった驚いたお話でもあり、なるほどとも思った話でした。

ピアノは調律師が調律してピアノでは、音律は出来上がった状態なので、演奏家は音律を操作することはできない。管や弦はそれをしている。

ピアニストだって、演奏する音楽によっては古典調律を希望したりもします。平均率で調律したって、それをおかしいと受け取る方もいます。これは私のおごりではなく、例え正しく調律したピアノでも、演奏家には変に聞こえることがあるのです。ピアノは楽器の音量などの問題からそのままの音程(基音といいます)では十分な音律を形成することが難しく、倍音を利用して音律を作っていることがあります。だから基本に忠実な調律をすると、正しく調律されていないと感じるピアニストもいます。しかしこれはもろ刃の剣で、どちらかに合わせるともう一方を狂って聞こえてしまうのです。こういうところにピアノ調律の面白さがあります。ピアニストの好みに合わせて、音律を変えることもあります。楽器も演奏家もさまざまですが、音律も弦楽器などのようにさまざまなのですね。いつもピアニストの皆様には勉強させていただいています。

なんか音ってマトリックスのようです。ドレミファソラシドは同じなのに微妙に違い、実態がない。基本は一緒でも絶対にこれが正しいという音律は定義されていなく、いろいろな条件で使い方が変わる。まだまだ自分が知らない音楽があり、聞いたことがない音律があると思うとこれからが楽しみです。

音律※写真は先日北部で調律したときのこと。牧場の隣にあったピアノですが、馬の親子がおいしそうに食事をしているのが印象的でした。自然の真ん中で、ピアノのオーナーが奏でるバッハの音楽はとても美しく響きました。今度は家族で遊びに行きたいです。


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Posted by かっちょ at 23:25│Comments(3)お仕事
この記事へのコメント
中近東音楽は平均律ではなく自然音律(?)です。
ドとレの間に4音階ぐらいあります。それであの緩やかな旋律なのですが、 
Fazil Say(トルコ人)が作曲した曲はピアノ曲でありながら実に中近東の楽器に似たような流れで、どうしてこんな風に音が流れていくのだろうと思ったことがあるのですが、あれも何か特殊な調律していたのだろうか???

ちなみに私はクープラン、バッハ、バード、スカルラッティ等は、やはり古典調律されたピアノか、チェンバロで弾くほうが好きです。

それより写真の馬は乗馬用ですか??? 乗りたいな~
(実は私乗馬します、それもかなり・・・)
Posted by AyşegülAyşegül at 2009年09月07日 01:25
大変興味深いお話ですね。実は私もかねてから調律については色々と思うことがありました。
イタリアのピアノで歌うと声とピアノが交じり合うのに、日本のピアノの調律だと声とピアノの音が分離するんですよ。感覚的なものなので説明しづらいのですが・・・日本の調律の仕方だと高音になるにしたがってずり上がっていく感じがするんです。ピアノの音が独立していくみたいな・・・
ヨーロッパの歌手の方々も日本の調律の仕方は歌いにくいと皆さん仰います。

聞くところによると、日本の調律方法(ヤマハ式?)とヨーロッパ方式(イタリア式)では調律の仕方が違うんだそうですね。
イタリアでは声楽コンサートの時のピアノは本当に歌いやすいんですよ。

ピアノソロの場合はどう感じるのか分からないですが・・・
古典音楽(バロック)の場合はやはり私も古典調律されたピアノで聞く方が落ち着きますね。

詳しいことは分かりませんが、演奏する内容によって調律の仕方が変えられるといいですね。
Posted by MasukoMasuko at 2009年09月07日 13:32
>Ayşegülさん

お馬さんたちはどうなんでしょうね。乗馬できるのかな?
今度聞いてみますね。
世界にはいろいろな調律法がありますね。私が仕事をしているのは西洋音楽向けの技法だけですが、いろいろ勉強していきたいと思います。

>Masukoさん

これはとっても奥が深いお話なので、答えが見つかるにはとっても時間がかかると思います。もしくは一生かかっても答えは見つからないかも知れません。
いろいろお話したいのですが、私も未熟者であるため、ここでのコメントは差し控えたいと思います。
ちなみに、イタリアではどんなメーカーのピアノがよく見られるのですか?
Posted by かっちょかっちょ at 2009年09月09日 22:57
 
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